「私にとって、東京は発見の場です。」ジュリアン・メルシエさん
「東京は山手線のような存在です。」 ジュリアン・ウルフさん
2人が手に持っているこの紙はなんだと思いますか?
実はこれ、JR山手線の田端駅をイメージして作ったポスターです。スイスからやってきた2人のジュリアンさんが行うアートプロジェクトが今注目されています。その名は「Yamanote Yamanote」。山手線各駅のイメージをポスター化し、東京の魅力を発見・発信するプロジェクトです。
そんなジュリアンさんたちの作品を一堂に集めたイベントが 8月9日(金)から渋谷で行われます。「YamanoteYamanote」プロジェクトのブランド展開としてポップアップストアの立ち上げイベントです。ポスターだけでなく、Tシャツやポスターカードなど、彼らが見てきた東京の姿が描かれたオシャレなグッズを販売し、東京の魅力を発信していきます。
「Yamanote Yamanote」プロジェクトとは?
スイス出身のグラフィックデザイナーであるジュリアン・メルシエさんとジュリアン・ウルフさんが、東京の中心を回るJR山手線が通る全29駅を、各駅ごとにイメージポスターを制作し、各駅の周辺で展示イベントを開催して駅のイメージや街の魅力を発信していくアートプロジェクト。2016年に始まったこのプロジェクトは、電気街で有名な秋葉原駅から時計回りで定期的にポスターを制作・展示し、現在田端駅まで完成しています。これまで24駅分を3年かけてたどり、残す駅は「西日暮里」、「日暮里」、「鶯谷」、「上野」、「御徒町」そして、来年開業予定の何かと話題の「高輪ゲートウェイ」の合計6駅です。
2人のジュリアンさんが知り合ったのは、母国スイスではなく、意外にも日本。しかし、同じ出身、同じ職業、そして同じ名前と共通点が多いことから、2人で一緒に「東京」をテーマに何か創作活動をやろうと始めたのが、この「Yamanote Yamanote」プロジェクトでした。意気投合した2人は、山手線の各駅周辺を歩き回り、地元の飲食店に立ち寄ったり、その街の歴史や特徴の調べたりなど、五感をフルに生かした実体験からインスピレーションやイメージを得てポスター制作をしています。
また、2人のポスターにはタイポグラフィー(文字表現)が巧みに使われています。母国語のアルファベットを使うのはもちろんですが、13年以上日本に住むメルシアさんと、日本生活7年目のウルフさんは、日本語学校での学習経験を生かして、平仮名や漢字の文字の意味、成り立ち、そして形などにこだわりながら遊び心あるデザインを創考え、独特な日本語表現を生み出しています。2人の作品に登場する日本語を見て、私は普段日常で見るものとはどこか違う独特な雰囲気が醸し出されていて、日本語の意外な一面を見るような感覚になりました。これまでの作品はこちらからご覧になれます。
そして、2人で1枚のポスターではなく、それぞれがポスターを制作をすることで、それぞれの視点・着眼点が反映されている個性的な作品が生まれ、プロジェクトに深みを与えています。しかし、それぞれが単独で制作するのではなく、2人でブラインストーミングをしてアイデアっを共有したり、試作品を見せ合い議論したりと、互いのイメージを磨き上げながら完成度の高いポスターを作っていく共同作業でもあります。
さらに、展示イベントもプロジェクトの特徴の1つ。イベントは、主に駅周辺の飲食店などで行われ、お酒を嗜みながらの鑑賞もできます。いわゆる美術館のようなところでの鑑賞ではなく、カジュアルで和やかな雰囲気の中で作品を楽しむことができます。展示イベントでは、制作者のジュリアンさんたちとの会話を楽しむことが出来るのはもちろんですが、地元の人やアーティスト、外国人など様々な人たちが行き交い、会場は自然と国際交流も出来る空間になっているのがこのプロジェクトの魅力です。
これまでの展示会の様子はこちらからご覧になれます。
24番目の駅「田端」ポスター展示イベントの様子
先月6月27日に田端駅近くの映画館「シネマ・チェプキ・タバタ」で、田端駅のポスター展示イベントが行われ、ADCNewsもイベントを取材してきました。これまで展示イベントは主にカフェやバーなどの飲食店でしたが、今回は田端の商店街にあるこじんまりとした映画館「シネマ・チェプキ・タバタ」での開催。この映画館は、目や耳の不自由な方が映画を楽しめるようにイヤホンや音声ガイド、字幕などバリアフリー環境を持ち、日本唯一のユニバーサルシアターとしても有名です。
それでは田端でのジュリアンさんたち作品をご紹介します。
メルシエさんが作った田端のポスターは、学校でもよく使う縦書きの原稿がメイン。実は田端は文豪の町として有名であの芥川龍之介や菊池寛など著名な作家が生活の拠点としていた場所です。その文豪たちに欠かせない原稿に着目したメルシアさんはポスター全体に原稿を描き、原稿の升目を生かして田端の「田」を表現。漢字の形と街のイメージを融合させた作品です。色使い注目すると、白、黒、茶色の3色で一見シンプルですが、レトロな雰囲気を漂わせる作品になっています。シンプルでありながら遊び心を忘れない一枚です。
続いては、ウルフさんの作品。上から見た本の形を活かして田端の「端」を表現し、その下には電車、そして「TABATA」の繰り返し。メルシアさんと同様、文豪の街に注目し、それを本で表現。その一方で、JR東日本の車両基地であり、東京新幹線車両センターである田端にも注目したウルフさんは車両を描きました。さらに、駅周辺を歩くと聞こえる電車の走る音を「TABATA」で擬音化。文豪と電車の組み合わせた作品は過去と現代が共存する田端を描いています。文豪と電車の組み合わせた作品は過去と現代が共存する田端を描いています。
展示イベント当日は、こじんまりとした映画館に展示された2人の作品を見に、多くの方が来る大盛況ぶりでした。
2人にとって生活の場でもある東京は、一言では言い表せられない程多様性に溢れる場。山手線の駅はまさにその一つであり、各駅にそれぞれ違う雰囲気があり、違う魅力がある。普段何気なく過ごしていた東京の日常が、彼らのアートによって新しい世界観へと変わります。今回取材をして、そんなことを感じました。
次の駅「西日暮里」の展示イベントは8月末を予定しているとのことです。次回はどんなポスターが出てくるのか楽しみです。でもそれまで待ちきれない方にはぜひ8月9日(金)のイベントに参加してみてはいかがでしょうか。これまでの彼らの作品を見るチャンスです。お見逃しなく!
【イベント情報】
「Yamanote Yamanote」ポップアップストア開催情報
「Yamanote Yamanote」プロジェクトがブランド展開として渋谷にてポップアップストア開店に記念して、8月9日(金)にブランド立ち上げのイベントが開催されます。ストアでは、これまで制作してきた各駅のポスターや、それをモチーフにした T シャツ、ポストカード 、そして 2 人のデザインを融合させた「リソグラフプリント」 を販売が行われる予定です。
イベント情報はこちら。
【場所】渋谷 Fab Cafe Tokyo
【電話】03-6416-9190
【店内サイト】https://fabcafe.com/tokyo/access
【アクセス】京王井の頭線 神泉駅 南口 徒歩 3 分 、 JR 渋谷駅 徒歩10分
・ブランドローンチイベント 2019 年 8 月 9 日(金) 19:00 〜 22:00
・一般参加期間 2019 年 8 月 10 日(土)~ 8 月 18 (日)
猛暑の夏ではありますが、斬新な発想で東京を描く2人の作品を鑑賞してリフレッシュしてみてはいかがでしょうか。
「Yamanote Yamanote」プロジェクト公式サイト:http://www.yamanoteyamanote.com/
「Yamanote Yamanote」プロジェクトFacebook:https://www.facebook.com/yamanoteyamanoteposters/
「Yamanote Yamanote」プロジェクトInstagram:https://www.instagram.com/yamanoteyamanote/