緊急事態宣言が出され、外出自粛の影響で飲食店はかつてない危機を迎えています。それでも、様々な工夫を凝らし頑張っているお店があります。
青山にある日本料理「てのしま」は、早々とテイクアウトをはじめました。その理由を店主の林亮平さんにお話を伺いました。
日本料理「てのしま」
「てのしま」は2018年に開店。香川県出身の林さんが、ご自身のルーツである瀬戸内海に浮かぶ島「手島」の認知を広めようと、どなたでも楽しんでにいただける本格日本料理をテーマに立ち上げたお店です。
お店のInstagramでは、こだわり抜いた店の雰囲気や器、厳選した食材や料理を見ることができます。
(林さんのルーツ 手島の写真 てのしまInstagramより)
開店から瞬く間に口コミなどで広がり、人気店に。2年経たないうちにミシュランの星を獲得しています。
京都の老舗料亭「菊乃井」出身
林さんは大学を卒業後、京都の老舗料亭「菊乃井」の門を叩きます。
上海万博では日本産業館のレストランで数々の名店の料理人を束ねる料理長を任されたり、大将の村田さんについて、世界各国で和食を広めるイベントなどを取りまとめたりと常に世界の舞台から和食を見つめてきました。
テイクアウト販売
てのしまは、現在の状況を踏まえ、一旦営業を自粛し4月から期間限定でテイクアウトの商品販売をはじめています。せっかく始めるならその場凌ぎの販売ではなく、ご自宅で料理屋の味を楽しめるものにと、工夫を凝らした料理となっています。
季節に合わせて中身が変わるおいなりさんと、その日の仕入れに合わせて具材が変わる棒寿司。写真は穴子と鰆です。隙間なく折詰されていて親子3人で食べてもお腹が膨れます。おいなりさんの単品は、具材を選べるようになっています。
てのしま寿司は3種類のシャリを使い分けています。〆た魚には赤酢を入れた旨味の強いシャリを、いなり寿司のシャリは気持ち甘めに。穴子寿司はほんのり甘い穴子に合わせて白酢でさっぱりしたシャリを使っています。
(てのしまInstagramより)
お店では、料理の締めに出てくるご飯。お客さんの食事のペースに合わせて炊きたてを出してくれます。持ち帰り用に油脂を入れ、冷めても美味しくいただけるように工夫をしています。
ご自宅で炊きたてをいただきたい方のために、米と具材と出汁での販売もしています。
一番人気は、だし巻き玉子。こうした状況の中、ご自宅で食べるには素朴で美味しいメニューが喜ばれているのかもしれません。Instagramには林さん自らが作っている映像も掲載されています。
林さんのこだわりがあります。
テイクアウトの注文は、受け取る2時間前までならオーダー可能にしています。そして、受け取り時間に合わせ調理をし、出来たてを受け取ってもらえるようにしています。
さらに、店で出す料理とテイクアウトで味付けや調理方法を変えているそうです。通常店で出す料理は、お客さんが口にするタイミングに全てを合わせて調理しています。だから、テイクアウトの料理は作ってから1〜2時間後に食べて美味しいように作っています。
これは、菊乃井時代に培ったものだと林さんはいいます。
菊乃井では店で出す料理以外に、お惣菜をデパートなどで販売しています。その料理のほとんどが、菊乃井で働く料理人の手によるもの。普段から店の料理を担当している料理人が味見をしながら作り上げてきた経験とノウハウがあったからこそテイクアウトに踏み切れたといいます。
林さんの思い
外食する人が減り、休業を余儀なくされている店舗が増えていく中、林さんは営業を続けていくことを選びました。困っているのは飲食店だけではなく、食材を提供している生産者も困ることになるからだ。
テイクアウトで通常の売り上げが賄える訳ではないが、こうして続けていくことが、重要だと林さんはいいます。
現時点では5月16日までテイクアウトを続け、5月19日から店舗を再開したいと準備を進めています。
こうした時期だからこそ、適正な価格で美味しいものを食べてもらいたい。
林さんの挑戦は続きます。
店舗情報
〒107-0062
東京都港区南青山1-3-21 1-55ビル2階
03-6316-2150
今後の影響につきましては、店舗のホームページなどでご確認ください。
テイクアウト営業(5月16日まで 5月3日〜6日はお休み)
月曜~土曜12:00~19:00(L.O17:00)