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【特集】日本在住外国人の悩みに寄り添い半世紀 TELL JAPAN

外出自粛の中、大きな不安やストレスを抱える人は多いはずです。それは言葉も文化も違う異国の地からやってきた外国人ならなおのこと。彼らはどんな悩みを抱えているのでしょうか。

英語による無料電話相談を受けているTELL JAPANでは、現在問い合わせのうち約50%が新型コロナによる相談なのだそうです。それに伴い、普段以上に一つの電話に対応する時間も長くなっており、結果的に対応できる電話の数が限られてしまっているといった状況になっているそうです。

日本に住む外国人も増え、多様化していく日本社会で、悩みを抱える人々に耳を傾けるTELL JAPANに話を伺ってきました。

 

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TELL JAPAN

 

TELL JAPANの歴史は古く、元々は1953年にロンドンで始まった自殺予防の電話相談がルーツ。1973年に「東京英語いのちの電話」として英語での電話相談を開始しました。今では日本全国に活動を展開しています。

こちらでは、自殺などの精神的危機で苦しむ方々の悩みを聞く電話相談(ライフライン)と、心の悩みを解消するために専門スタッフによる助言を行うカウンセリングを行っています。

お話を伺ったのは、ライフラインディレクターのビッキー・スコージさんとクリニカルディレクターのビリー・クリアリーさん。

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TELL JAPAN ビッキーさんとビリーさん

 

ビリーさんによると外国人相談者の中には、文化や言葉の違いなど根本的な差異から、なかなか日本社会に馴染めずに悩みを抱える人も多いそうです。

外国人として「他者」のカテゴリーに属するということ

最近では「外国人」という言葉を一日に一度は耳にするくらい外国人が身近な存在になってきています。

「“外”国人として日本社会の“外”のカテゴリーに属されてしまうことは、日本社会から疎外されたように感じ悩む人も多い」と、自身の経験を踏まえてビリーさんは言います。

しかし、どうして日本人はここまで日本人/外国人という内/外のカテゴリーにこだわるのでしょうか?

「人のアイデンティティや価値観というものは住む環境によって影響を受けながら変化していくものです。そうして生まれた新しい価値観というものが既存の環境で、必ずしも受け入れられるとは限りません。うまく適合できなかった時、人は社会から疎外感を抱きやすい」とビッキーさんは言います。

近年在住外国人が増えてきたとはいえ、外国人は人口のわずか2%ほど。“外”国人という言葉も、大きな壁を作っている要因のように思えます。

大切なのは、この疎外感に悩んでいる人がいるということに、カテゴリーの内側にいる人々がいかに気づけるかということではないでしょうか。

悩みに日本人/外国人といった区別はない

驚くことにTELLのライフライン利用者のうち約50%は日本人だそう。海外経験が長く、帰国後日本人社会に馴染めずに悩んでいる人や日本と海外両方にルーツがあり英語で話すほうが話しやすいという人などその背景は人それぞれです。英語の話せない日本人も相談してくることもあるそうです。

しかし、日本全国に7000人のボランティアが対応する「いのちの電話」などの電話相談があるにもかかわらず、何故ここまで英語ライフラインの日本人利用者が多いのでしょうか?

ビッキーさんは、日本特有の恥文化や他人に悩みを打ち明けづらいスティグマが関係していると言います。

スティグマとは、ある集団に対してネガティブなレッテルを貼ることを意味します。それは偏見や差別だったり、周囲(社会)の反応、当事者が主観的に自己にレッテルを貼ってしまうことでもあります。

ビリーさんによると、日本人は何か悩みを抱える時、それを自分や家族以外の他人と共有するのは正しいことではないと考える傾向にあるそうです。特にそういった傾向はカウンセリングにくる日本人相談者に見受けられ、このスティグマからなかなか悩みを外に打ち明けれず、精神状態が深刻になってからようやくカウンセリングを受けにくるというパターンが多いそうです。

「匿名」かつ「英語」を介する相談窓口は、利用者にとって日本社会とは違ってあまり恥を感じずに悩みを打ち明けられる場所なのかもしれません。

 

インタビュー動画

彼らの活動が詳しくわかるお二人のインタビューの様子をご覧ください。


TELL JAPANの沿革とライフラインについて



TELLでは1991年からライフラインと並行してカウンセリングサービスも提供しています。

カウンセリングは、日本では資格を保有しなくとも心理カウンセラーと名乗って業務従事できるというのが現状です。こうした背景から、TELLでは利用者が安心して相談できるよう一定の基準を満たした資格を持ったカウンセラーを提供しようと始まりました。

TELLのカウンセリングでは、日本語、英語、中国語、スペイン語の四か国語に対応しております。

 

カウンセリングについて、日本社会で外国人として生きることについて


Interview with TELL JAPAN (2/4)

 

体調が悪くなれば病院にいくことは当たり前なのに、ストレスを感じている時に病院へ行こうとする人はあまり多くないと思います。たとえ精神科や心療内科にかかったとしても、莫大なコストの面から患者一人ひとりに時間をかけることが難しく、結局治療法は薬頼みだったりするのが現状です。こうした治療は患者を生かすことはできても、問題の根本解決にはならないと言います。

カウンセリングを担当するビリーさんは、相談者が落ち着いて安心できる環境づくりを最も大切にしているそうです。カウンセリングの最大の目的は「治癒」ではありません。相談者が自己の悩みに気づき、自身で問題解決や意思決定をできるようになる能力を増進できるように援助してくことが大きな目的です。

TELL JAPANでは学校や企業の中での意識改善にも積極的に力を注いでいます。

アウトリーチプログラムの必要性

アメリカ、イギリス、オーストラリアの共同研究によると、心の健康である、メンタルヘルスの問題は先進国の若者のうち50%が14歳までになんらかの問題を抱え、その確率は24歳になると75%まで上がります。

特に一番避けたいのが自殺。日本では若者の自殺率は以前から問題となっており、その割合は他の先進国と比べても圧倒的に高いというデータがあります。

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急増する若者の自殺率。助けを求め連絡をくれる方々を待つだけではなく、彼らが出向き発信することが急務だといいます。

TELL JAPANでは、インターナショナルスクールなど海外帰還者が多く在籍する学校へ出向きワークショップを行っています。目的は特にLGBTQや女性といった当事者になりやすい層に、助けが必要な時に相談できる場所があるということを知ってもらうこと。

またワークショップでは自殺行動の原因になりうるもの、助けを要する人のサインをどのように感じ取るのか、周りに悩む人がいたらどうサポートをすべきかなどを、生徒や教師そして両親にもアプローチを行います。

自殺というとなかなか話しづらく避けてしまいがちなトピックではあります。こうした活動こそ、周囲の「気づき」と「理解」を深めることができるといいます。

 


Interview with TELL JAPAN (3/4)

 

活動は学校だけでなく企業にも広がります。日本では2015年より従業員が50人以上の企業に対しストレステストが義務付けられるようになりました。TELLではこのストレステストを会社を代理して実施し、必要であればカウンセリングセッションを提供するなどして従業員のメンタルヘルスケアのサポートを行っています。またメンタルヘルスで助けが必要な従業員にどういったサポートをしていくべきか管理部へのアプローチも欠かしません。

大切なのは早く「気づき」治療すること

こうした心の問題はなるべく早く自分の心がSOSを発していることに気づき、対処することが大切だとビッキーさんは言います。放ってしまうと症状が悪化し、深刻化する可能性が大きくなるからです。

考え方を変えてみると、個人の心の悩みの大半は社会の中で生まれます。それは人間関係だったり社会全体と個人の関係だったり様々かもしれませんが、社会とは切っても切れない関係性にあると思います。

社会との関係のこじれから生まれた悩みというものは時に自己解決できないこともあると思います。そんな時に問題を抱え込むより、結局は出所でもある社会に還元するということが状況を打破するために必要不可欠のように感じました。 

もちろん当事者だけでなく社会全体が悩んでいる人への「気づき」と「理解」の意識改善をしていくことは大切です。互いに改善に向け歩み寄りをすることこそが日本におけるメンタルヘルス問題向上への道のりだということが今回のインタビューを通して学ばせていただきました。

(取材  2020年3月6日)

 

TELL JAPANへのお問い合わせ

TELL Lifeline では、危機にあるなど早急に助けが必要な人への
英語による無料の電話相談を年中無休で受け付けています。

03-5774-0992
9:00 ~ 23:00 (年中無休)

チャットによる相談も可能

現在の対応状況については
※ウェブサイトをご確認ください。

 

カウンセリングへの問い合わせ
03-4550-1146 (英語)
03-4550-1147 (日本語)
月曜日〜金曜日 
10:00 〜15:00

 


Interview with TELL JAPAN (4/4)

 

新型コロナウイルス対応について

TELL JAPANでは、コロナウイルスに関する情報をホームページ上で英語で公開しています。

Coping With A Pademic / TELL JAPAN

 

普段は朝9時〜夜11時まで相談を受け付けているライフラインですが、緊急事態宣言を受けて対応時間が少し変わってきています。4月13日より東京と大阪にあるコールセンターを一時閉め、ボランティアスタッフは在宅でオンラインチャットサービスと併用しながら電話対応に当たっているようです。ライフライン対応時間は日によって異なります。詳細については下記をご覧ください。

Changes To Lifeline Phone & Chat Hours During COVID-19 | TELL Japan


 

 

お願い

NPO法人TELLでは資金調達を目的としたワインオークションを年に一回開催しています。今年は新型コロナの影響で残念なことに中止となってしましました。
国際化していく日本において TELLのような団体はまさに日本社会を支える大切な役割を担っています。存続していけるよう、ぜひご支援お願い致します。

 

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