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「笑いあり、涙あり、苦あり、キジル千仏洞保存に協力した日本人」6

第6回「千年後の子供たちに見せたい~これからの修復保存に一言~」

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仏教の世界で「縁」というのは重要な言葉だそうだ。仏教の本を読んだ時に、そう書かれていた。世の中は、「縁でできていると。必然の縁、予期せぬ縁、選択できる縁、、、と様々な縁の中で人間は暮らしている。その「縁」をどう受け止めていくのかが「心」の問題なのだそうだ。


「私には子供がいないんですよ。縁が無かったんですなあ」とご自身の身の上を語る小島さん。

「その代り、キジル千仏洞と出会うご縁を頂きました」と続けた。


私は、6年前にある番組を通じて小島さんと出会った。番組が終わったのだから、そこで関係が終わってもよかったのだが、小島さんにいざなわれ、またもともとの強い好奇心から新疆を初訪問した。私も20年近く中国に通っているが、この国は広い。まだまだ訪ねていない所がたくさんある。だから、キジル千仏洞に出会えたのは大変な事。ここまで見ただけで、「縁」が3つ。小島さん→新疆訪問→キジル千仏洞。


するとキジル千仏洞以外にも目が行く。交河故城、スバシ故城、天山山脈ウイグル族やカザフ族などの少数民族、新疆には数多くの遺跡や自然や民族がある。とにかく興味が尽きない。興味が湧けばそこにかかわる人々との出会いが必然的に出て来るし、自分の知識も増えるから、もっと深く追いかけていく。そうなると、考古学者や民族学者、環境の専門家などへ話を聞きに行く。そこで更なる疑問がわくので次にまた・・・。もう、際限がない。間違いなく、これも「縁」なのだろう。


一方でこんな縁もある。小島さんは携帯電話を持たない。ある時「もし、相手が約束の時間に来なかったらどうするんですか?」と聞いた。今では、待ち合わせをする時、場所や時間をしっかり決めず携帯電話で連絡を取り合いながら、相手を探したりすることも多い。小島さんは「後ろに予定が無ければ2時間くらい待ちますよ。それで来なければ仕方がないね。縁が無かったんだから」と。出会えないことも縁らしい。


縁が人生にとって重要な役割を果たしているのなら、キジル千仏洞に多くの子供や若者が参観してほしいものだ。そこで、仏の存在を始め、歴史、芸術、建築など大いに堪能し刺激を受けてほしい。そうすることで、その中から「文化財を修復したいな」と思ってくれる子供が現れるかもしれない。そうなれば、キジル千仏洞をまた多くの人に見てもらうチャンスができる。まさに無数の「縁」が、キジル千仏洞を守り、文化財を守っていく。

「百年先、千年先の人たちに見てもらいたい。これを見た人は、多くの事を感じ取り、そして考えてくれるはずでしょう」と小島さん。30年近くにわたって保存活動をしてきた信念を支えていたのは、未来の子供たちへの思いなのかもしれない。


筆者:永野浩史

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