世界最長の英雄叙事詩「マナス叙事詩」を日本で。遊牧民の魂である伝統音楽に触れるイベントです。
今年、日本とキルギスは国交を樹立して25年。日本政府は、中央アジアに力を入れており、その影響で日本とキルギスの交流が盛んです。その25周年イベントに先立ち、現在キルギスで伝統音楽を奏でるグループのコンサートが東京で開催されました。
キルギス共和国は、天山山脈とパミール・アライ山脈に沿うように位置しています。(北はカザフスタン、東は中国、南はタジキスタン、西はウズベキスタン)、面積は日本のおよそ2分の1。国土の40%が標高3000mを越える山になります。人口およそ550万人。元々遊牧民であったキルギス人。彼らの音楽は厳しい自然を頻繁に行き交う遊牧生活において重要なコミュニケーション手段として独特の文化を育んできました。
キルギス人である私は、ふるさとの歌を聴きたいと恋しい思いで会場に足を運びました。日本でキルギスのコンサートに行ける機会はめったにありません。そういう意味でも私にとって貴重な機会でした。
コンサートは「マナス叙事詩」の語りから始まりました。これはキルギス族を代表する英雄の活躍を描いた「世界最長」と言われる英雄叙事詩です。文字を持っていなかった遊牧民たちは口伝えで何万行にも及ぶ物語を現在に至るまで綿々と受け継いできました。この叙事詩の内容は、人々の団結力、人民への熱愛、家族愛、友情愛などのように愛情に精神世界も描かれています。キルギスを語る上では欠かせない存在でもあります。
Sayakbay Karalaev (1894-1971). Manaschi
コンサートでは三弦楽器のコムズをはじめ、金属口琴、木製口琴などといった遊牧民の伝統楽器が演奏され、生のキルギスの伝統歌も聞けるという贅沢な時間でした。特に私にとってキルギスのСары Ойサル オイという哀愁に満ちた伝統歌が歌われたのが印象的で感動的なものでした。サル オイという名前の山に登って、自然と対峙し、瞑想しながら、自分と対話して、人生について考えさせるという哲学的な歌です。
Ordo Sakhna Music from KYRGYZSTAN Folk Ethnographic Theater
母国の風景、母国の人々、そして遠く離れて生活している家族のことを思い出しながら聞いていて、感慨無量でした。コンサートが終わった後、まるでキルギスに行ってきたような、しばらく遊牧民生活へタイムスリップしたような感覚になりました。
まさにコンサートの名前の通り、私の中で「遊牧民の魂」がよみがえった感じもありました。改めて自分はキルギス人であること、遊牧民であることに誇りを持ち、そして、母国へ更に恋しさを抱えながら、東京の混雑する電車に乗り込み自宅へと向かいました。
目の前でキルギスの伝統音楽に触れるまたとないチャンスです。是非会場へ足をお運びください。
記事:アクマタリエワ ジャクシルク
開催情報
オルド サフナ来日公演2017
11月19日(日)赤坂区民センター区民ホール(公演終了)
11月24日(金)高輪区民センター区民ホール(公演終了)
チケット自由席2,000円(要予約)
チケットのお問い合わせは、ordo.sakhna2017japan@gmail.com FAX:048-771-5092
主催:在日キルギス共和国大使館
協力:港区・(公財)Kissポート財団・(一財)港区国際交流協会・日本口琴協会
協賛:The Christensen Fund
共催:オルド サフナ来日公演2017実行委員会