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【映画公開情報】幸福の国での家族の葛藤「ゲンボとタシの夢見るブータン」18日より上映開始

 

「人生とにかく無理せず、良いことに集中する、それが人生を幸せにすると思います」ーーー  ゲンボ

 

8月18日(土)のお昼時、映画館・ポレポレ東中野にて、ドキュメンタリー映画ゲンボとタシの夢見るブータン」が上映されました。第1回目の上映後には、監督の1人であるアルム・バッタライさんと、映画の主人公ゲンボさんの舞台挨拶がSNSを通して行われ、会場には立ち見が出るほどの人で賑わいました。今回は、初日の舞台挨拶の様子をお伝えします。

 

f:id:yusukeyasuda:20180823130730j:plain                  (C) ADC

 

この映画は、ブータン出身のアムル・バッタライさんと、ハンガリー出身のドロッチャ・ズルボーさんによる共同監督です。2人は、ドキュメンタリー修士課程コースの第一回ドック・ノマッズにて修学。その後、世界中で行われる国際共同製作のピッチングセッションイベントに参加し続け、製作資金を獲得し、この日の上映に至りました。(*ピッチングセッションとは、ドキュメンタリー企画を提案する公開会議のことで、ドキュメンタリー制作の予算を確保する一つの方法として世界中で行われいます。

 

(C)ÉCLIPSEFILM / SOUND PICTURES / KRO-NCRV

ゲンボとタシの夢見るブータン」(英語名はThe Gardian)は、急速に近代化が進んでいるヒマラヤ最後の仏教王国・ブータンが舞台。伝統を何世代にも受け継ぎ、国および国民の幸せを目指して来たブータンは、「幸せの国」として日本でも話題となり、国民の幸福度を測るGNH(国民総幸福量)はブータンを象徴するキーワードです。

しかし、そんな伝統を重んずるブータンも近代化を進めていき、ネット社会を受け入れ、スマートフォンが庶民にも普及。世界との繋がりが増えたことで、人々の中に多様な考え方や価値観が生まれ、様々な生き方を模索するようになってきたのです。その変化は、家族の中にも見え、今回の映画では、ブータンの小さな村に住むとある家族にスポットが当てられています。

登場人物は、代々受け継がれてきた寺院を継ぐという長男の立場を踏まえ、英語が学べる学校に行き続けるか、それとも僧院学校に入り直すかを悩む主人公・ゲンボ(長男)。女の子でありながら、男の子としての生き方を模索し、国初の女子サッカー代表に入ることを目指して日々努力するタシ(妹)。子供の幸せを願い、ゲンボには一人前のラマ(師僧)になって欲しいと諭すテンジン(父親)。一方、世界の流れに遅れぬよう子供には英語教育を受けさせ、グローバル化の中でもブータン人として活躍できるように願う対照的なププ・ラモ(母親)。

 

(C)ÉCLIPSEFILM / SOUND PICTURES / KRO-NCRV

家族に目を向け、彼らそれぞれの夢や思いを映し出し、変わりゆく時代の中での出てくる異なる考えや葛藤、そして、普遍的な家族愛を見つめていく心温まる74分間です。

この映画の良さは、将来に悩んでいるゲンボとタシに答えを求めず、彼らのありのままの姿を映していくところだと私は感じました。スマートフォンでサッカーの試合を観たり、親への愚痴をこぼしたりと、平穏に暮らし笑顔が絶えない兄妹2人。そんな彼らの日常が、美しいブータンの風景と音楽の中で映し出され、ブータン独特の雰囲気に包まれながら見つめる仲睦まじい兄妹からは不思議な感覚を湧き起こしてくれます。

 

(C)ÉCLIPSEFILM / SOUND PICTURES / KRO-NCRV

 

上映後に行われた舞台挨拶では、スクリーン上に、監督の1人アルム・バッタライさん(左側)と、映画の主人公ゲンボさん(右側)が登場。

 

(C) ADC

この日の上映は、ブータン人作家・アムルさんによる作品が世界で初めて公開されたということもあり、アムルさんは、世界で普遍的なテーマを世界中の劇場で発信し、多くの皆さんに観ていただけることを大変嬉しく思っていると述べました。今回、ブータンを舞台にした背景には、ブータンはまさに伝統と近代化の中で急激に変わりゆく国で、まさにこの変遷期を今映像に収めたいという思いがあったそうです。もう1人の監督・ズルボーさんは、残念ながら今回出席できませんでしたが、ズルボーさんは何事にも興味を持つ好奇心旺盛でエネルギッシュな女性。分析に長け、物事を論理的に捉えて映像制作をしていく方。一方、アムルさんは、感覚的・直感的に考えていくタイプ。この一見相反する組み合わせですが、むしろこの2人だからこそ、情緒的でかつ普遍的で考えさえられるバランスの良い作品が出来たと私は思いました。

 

(C)ÉCLIPSEFILM / SOUND PICTURES / KRO-NCRV

ゲンボには、タシにも負けないぐらいのサッカー好きで、夢はサッカー選手になること。しかし、17歳の今、徐々に家族が受け継いできた寺院の大切さを実感し、寺院を守る義務感も抱き始めているようで、映画でも悩み続けていたゲンボは、現在進行形で今後の自分を模索しているようでした。

更に、ゲンボさんは、どの国に行きたいかという質問で、日本ではなく、オーストラリアに行きたいと回答。その答えに会場は笑いで包まれ、ゲンボさんの気取らない性格に好感が持てました。

 

最後に、アムールさんとゲンボさんからそれぞれ日本の皆さんにメッセージ(訳)を頂きました。

 

ゲンボさん「〜前略〜 人生とにかく無理せず、良いことに集中することがいいです、それが人生を幸せにすることだと思います」

 

以前日本を訪れたアムールさん「日本にきて、日本の良いところにたくさん触れて、日本の素晴らしさに驚かされました、日本とブータンはとても似ているところがたくさんあり、両国とも家族を大切にする国ですので、この映画が受け入れられて多くの方に見てもらえたらと思います」

 

時代の流れとともに変化する価値観と生き方。それは今の日本でも起きていることで、決して他人事ではないと思います。この映画を通じ、家族のあり方や伝統文化など、様々なことを考えさせられました。劇場で「幸せ」について考えてみるのはいかがでしょうか。

(C) ADC

 

・トレーラー(8月18日(土)よりポレポレ東中野ほか全国劇場ロードショー)

     youtu.be

(C)ÉCLIPSEFILM / SOUND PICTURES / KRO-NCRV

 映画情報

【公式ホームページ】https://www.gembototashi.com/

フェイスブックhttps://www.facebook.com/gembototashifilm/

・都内の劇場情報(東中野ポレポレ

【タイムテーブル】*9月7日まで 12:20/14:10/17:40/19:10 それ以降は未定

前売り券の購入はこちらからhttps://www.major-j.com/info.php?f=ngxacumz4ik

【アクセス】JR東中野駅西口北側出口より徒歩1分・駅ホーム北側正面/地下鉄大江戸線A1出口より徒歩1分

【連絡先】TEL 03-3371-0088

・今後の上映後のトークイベント情報(東中野ポレポレ)

8月26日(日)12:20〜の回上映後 松本 紹圭浄土真宗本願寺派光明寺僧侶、一般社団法人お寺の未来代表理事) 
8月
29日(水)19:10〜の回上映後 天城 靱彦Tokyo Docs 実行委員会委員長)
8月
30日(木)19:10〜の回上映後  健作 (写真家、元ブータン日本人教師)

9月2日(日)  12:20〜の回上映後 関野 吉晴(探検家、医師)
9月
3日(月)  19:10〜の回上映後 石川 直樹(写真家)
9月
5日(水)  19:10〜の回上映後  のえみBe Inspired! 編集者)
9月
7日(金)  19:10〜の回上映後 加部 一彦埼玉医科大学総合医療センター小児科)

・プロフィール(公式パンフレットより)

アムル・バッタライ

1985年生まれ。ブータン出身。ブータン放送公社で若者をテーマに舌ドキュメンタリー番組の制作に5年間携わる。ドキュメンタリー修士課程コースの第1回ドック・ノマッズに参加し、好成績を残し、欧州連合による高品質な教育と世界との学術交流を目的とする、エラスムス・ムンドゥスの奨学金を勝ち取る。その後は、ドロッチャ・ズルム(ハンガリー)と、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭に併設された、ドキュメンタリーの国際共同製作を目的とする、Doc ForumやTokyo Docsなど、世界7カ国で開催されたピッチング・イベントで企画提案をする。国をまたがる6つの財団から製作資金を集めることに成功し、初長編ドキュメンタリー作品「The Next Guardian」を完成させる。現在、自身のドキュメンタリー・プロダクション「Sound Picture」を設立し、長編2作目となる「Kelden」を製作中。ブータンで数少ないドキュメンタリー作家の一人として、クリエイティブなドキュメンタリー製作を続けている

ドロッチャ・ズルボー

1988年生まれ。ハンガリー出身。ブタペストのエトヴェシュ・ローラン大学の映画史/映画理論を首席で卒業する。在学中、初監督した短編作品は、アストラ国際的ドキュメンタリー映画祭(ルーマニア)でベスト・スチューデント・ドキュメンタリー賞を受賞する。その後、ドキュメンタリー終始博士コースの第一回ドック・ノマッズに参加し、アルム・バッタイ(ブータン)と出会い、共に欧州連合によるエラスムス・ムンドゥス奨学金を勝ち取る。その後、世界各国で開催されているピッチング・イベントに参加し、国際共同製作のための資金を集め、長編デビュー作品となる「ゲンボとタシの夢見るブータン」(英語:The Next Guardian)を完成させる。現在はブタペスト演劇映画アカデミーでこうしを務めるかたわら、映画理論の博士号取得の研究を続けている。また、新進気鋭の映画作家をサポートする、ハンガリー・国立フィルム・ファンド・インキュベーター・プログラムで、長編2作目となる「Lessons in Hungarian」を製作中。

 

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