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「笑いあり、涙あり、苦あり、キジル千仏洞保存に協力した日本人」7

第7回 追記「新疆各地を歩いて~140数回の訪問から見えたこと~」

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初めて商用で新疆を訪問したのが、1982年。あれから32年、小島さんは140回以上、新疆を訪問している。キジル千仏洞の保護に始まり、ニヤなどの遺跡調査、新疆大学での奨学金制度などを立ち上げた。そして、私たちのようなメディアに請われて、新疆側への橋渡しとしての訪問もある。パスポートは、中国語で「簽証」と書かれた入国査証で埋め尽くされている。


「よくぞ、ここまで行ったものです。飛行機だって今のようにたくさん飛んでいないし、車も道も悪かった。事故もなくここまで来られたのには、感謝ですね」と小島さんは語る。もともと新疆は、対日感情が良いところだ。だから、余計なわだかまりも少なく、互いがすんなり受け入れあえたのかもしれない。でも、小島さんの活動が上手く言ったのはそれだけではない。「最初は、スケジュールや活動内容等、自分がコントロールしようとしたんですね。でも、どんなに頑張ってもコントロールなんてできないんですよ。なぜなら、彼らは彼らの流儀があって、そこを外すと全く動かないんです。まぁ、日本と蹲踞(そんきょ)の方法が違うんです」。そこで小島さんは、ある時期から現地の人に多くを任せるようにした。そうすると「ゆっくりですが動きだすんです。回り始めるんです。こうなるとしめたもので、今度は逆に普通なら無理なお願いも可能にしてくれるんですよ。これは面白いですね。」と笑いながら小島さん。


「国も民族も文化も違う同士が理解しあうなんて本当に大変なんです。そもそも理解しあえないものかもしれない。そこで重要なのが、相手が何を考えているか、よく話し合う事なんですよ。1回でダメなら2回、3回でも。時には激しく言い合ってもいいと思います、話しさえしていれば関係はいずれ修復します。でも話すことを止めて頭ごなしにガツンと行くと、大きな衝突になる。中国には、57の民族がいます。中国と、ひとくくりにして日本人は見ていますが、実は言葉も文化も宗教も違うんです。中国国内でも、ゴタゴタする時があるんですね。そう考えると、文化や民族が違うどころか、国益国益がぶつかる国同士なら、当然激しさは増します。だからこそ、お互い話し合うしかないんです」。これまでの経験の中で、小島さんが皮膚感覚で感じてきたことだ。


2011年9月、私は新疆の区都ウルムチで行われた小島さんの新疆活動30周年の記念パーティに参加した。この時、小島さんと一緒に活動してきた60代、70代と高齢の中国の人たちがやってきては、小島さんと抱擁するのを何度も目にした。彼らは、終戦前後に生まれた世代。日中戦争の残り香をかいできた人たちである。でも、そんなことを微塵にも感じさせない空気が、そこにはあった。


日中友好と言われますが、これからの時代は日中理解へ進化すべきですね。そして、日中共同へと歩むことが大切です。しかし、相互理解は困難を極めるので、互いに努力することを肝に銘じて、互いに忘れてはいけないのです」


外国と付き合うということは、非常に難しい。同盟国のアメリカとだって、いろんな利害がぶつかり決して問題なしとは言えない。我が家だって、夫婦で意見がぶつかり何日も会話もないことだってあるのだから、国同士ならもっと大変だ。夫婦げんかの場合、ふとした拍子に仲直りができることがある。子供が間を取り持ってくれるのだ。「子は鎹(かすがい)」とはまさにこのこと。それでは、国と国のケンカに鎹になってくれるのは何だろうか。もしかしたら、そのヒントが、小島さんの活動にあるのかもしれない。


筆者:永野浩史

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