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「笑いあり、涙あり、苦あり、キジル千仏洞保存に協力した日本人」3

第3回 「“探検”と称する文化財の破壊と保護~今、どう評価すべきか~」

文化財は、本来その所在している場所で保存されていることが望ましい。しかし、現実は必ずしもそうでない。いろんな理由で貴重な世界的な文化財が破壊されたり消滅したりしています。アフガニスタンバーミヤン石窟仏像が、宗教的理由から爆破されたことは記憶に新しいです」と語る小島さん。確かに世界では、多くの文化財が金銭的、宗教問題、戦争など様々な理由から失われている。「一方で、持ち出された文化財がきれいに保存され、残された文化財がいつのまにか散逸してしまった、ということもたくさんあるんです。皮肉なことですね」と小島さんは続けた。


中国では、19世紀以降、欧米列強の探検という名の下の「領土争奪戦、諜報戦」が激しく繰り広げられていた。世界的に有名なスウェーデン人探検家ヘディンやロシア人探検家プルジョワリスキーを始め多くの探検家が、政府より資金援助を受けて活動していた。実は世界では称賛される彼らも、宝を盗まれた国では「盗人」と呼ばれることも珍しくない。


小島さんは最近、スタインの第4次探検に関する論文を佛教大学研究紀要に発表した。スタインもまた、インドを植民地としていた英国の援助を受け探検をおこなっていた。「彼は、最初の3回の探検で大成功をしたんです。そこでやめておけばいいのに、4回目に行って大失敗をする。中国人の文化財保護意識が強まっていた。スタインは時代の変化を読み取れなかった」と、小島さんは326日に及び記されたスタインの日記から彼の心理を読み解く。


「確かに、探検家が持っていったものがイギリスやフランス、ロシアなどの博物館にあり、今では人類の遺産となっています。でも、その主張は取っていった側の理屈。実はその文化財は、それが存在する土地、気候、風土、そして民の元で残ることによって、大きな意味を持つものだと考えます。そのためには、現地での保護をしっかりする必要があるのです」


8年前、私は新疆の隣のキルギスに旅をした。中国との国境になっている天山山脈のふもとにイシククル湖という美しい湖がある。その湖畔にある、ロシアの偉大な探検家プルジョワリスキーの眠る墓を訪ねた。彼は、探検を終えると必ず立ち寄り休息するほど、イシククル湖を愛していた。「死んだら骨は湖畔に埋めよ」というのが彼の遺言だった。そこは今、博物館だ。その入り口には、ソ連の国旗が描かれている。建てたのは、当時のソ連だった。


国家の威信、領土拡大。そのために行われた探検。その犠牲になった文化財を思うと、今回の世界文化遺産への登録を素直に受け入れていいのだろうか、と思わずにはいられない。

 

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筆者:永野浩史

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