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緊急連載:「笑いあり、涙あり、苦あり、キジル千仏洞保存に協力した日本人」

シルクロード世界文化遺産」登録へ 「笑いあり、涙あり、苦あり、キジル千仏洞保存に協力した日本人」

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「文化的な価値」など、中々わかるものではない。ましてや将来のことなど・・・。

先日、日本の富岡製糸場が、世界文化遺産への登録をほぼ確実なものにしたが、「世界遺産」と聞いて富岡製糸場の価値を実感した人は多かろう。


実は日本の生糸に深くかかわっているもう一つの文化遺産が、登録されることが確実になった。


シルクロードの始点ー天山回廊の道路網」―。 中国、キルギスカザフスタンの3か国にまたがる天山山脈を中心としたシルクロードの遺跡33か所である。日本では、富岡製糸場の陰でひっそりと報道された。


実はこの保存には、ある一人の日本人が大きくかかわっていた。 登録勧告を受けた33の遺跡の中に中国4大石窟の一つキジル千仏洞がある。天山の雪解け水を源にするムザルト川のほとりに作られた、200を超える石窟群。ラピスラズリの青色を使った美しい壁画が特徴だ。


小島さん(元佛教大学客員教授)72歳。この遺跡の価値を見出し、保存活動を続けてきた人物だ。小島さんは、「宝石の鶴亀」(現As-meエステール)を創業し上場企業にまでした実業家。その小島さんは、1982年、当時外国人がほとんど入ることがなかった新疆ウイグル自治区に商用で初訪問。その後、何回か訪問する中で新疆の奥深い辺境のそのまた辺境のクチャを訪ねたのは1986年の事。現地の役人の案内でキジル千仏洞の見学をしたのだそうだ。この時目にした釈迦が描かれた壁画は、筆舌しがたい感動だったという。ただ、目を他にやると外壁や洞窟内など至る所が崩壊していて、遺跡の状態は危機的だった。そこで、この遺跡の保存・保護することを決意した。


もちろん、遺跡の保存・保護活動は初めての小島さん。専門の知識など、当時は持ち合わせていなかった。一体、自分には何ができるのか?現地では、修復はしていると言うものの、「人材、技術、資材」など全ての面が十分でなく、特に困っていたのが資金面だった。「世界的文化遺産として保存すべき」と考えた小島さんは、個人的寄付を申し出た。当時の新疆では、外国人が寄付をしてくれることなどなかったため、小島さんは真意を理解してもらうのに苦労したという。「寄付をしたい、と言って実は他の狙いがあるんじゃないか?」と疑いを持たれたらしい。


その後も何回か訪れ、保存のための募金活動を日本で始め、文化財保護の重要性を説きながら、多くの人の協力をえて、今日まで各種尽力をしてきた。そんな小島さんの活動費用は全て自分持ち。奥さんに頭を下げて、お金を出してもらったこともあったという。

それにしても、こんなに大変な思いまでして、なぜ活動を続けてきたのか。

「これは、間違いなく人類の貴重な文化財である」という強い信念があったからだという。 事実、今年世界遺産に登録され、人類の遺産になることになる。

日本には、小島氏のように人知れず世界で貢献している人が、たくさんいるのだと思う。名誉や功名心のために行っているわけではないので、ほとんど表に出て来ることもない。メディアに携わる人間として、そんな方々にスポットを当てていく必要があるのではないかと、責任を感じた。


これから数回にわたり、小島康誉氏に遺跡の保護を思い立ったいきさつや当時の苦労など、中々うかがい知ることができない貴重な経験を伺いながら、文化財を通じて世の中を多面的に見つめ、考えていこうと思う。


小島康誉氏・・・1942年名古屋生まれ。66年24歳で「宝石の鶴亀」(現As-meエステール)を創業。93年株式上場。96年創業30周年を機に54歳で社長を退任。一方で、87年得度し僧籍に入る。88年佛教大学卒業。中国新疆へは、82年以来、140回以上訪問し古代シルクロードの都市跡のニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査。出土した「五星出東方利中国」と織られた錦は、中国の「国宝中の国宝」の指定を受けている。


筆者:永野浩史

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